今や世界中で愛されるお寿司。ワインと楽しむ人も増えていて、日本のお寿司屋さんでも飲み物リストにワインが掲載されていることも当たり前になってきました。
寿司屋のカウンターで板前さんと話しながら好きなネタを握ってもらう伝統的な食べ方や、回転するベルトコンベアーがお寿司を載せた皿を運んできてくれる楽しみだけでなく、自宅で楽しむ手巻き寿司も大勢で囲む食卓やホームパーティでは大人気です。
お寿司のルーツ
寿司の源流は「なれ鮨」です。魚を塩と米飯を乳酸発酵させた鮨で、海から離れた土地へも運べるため、日本各地で愛されて来た発酵食品です。それに対し、現在の寿司は江戸前鮨、河岸に出る屋台が発祥。目の前の東京湾で捕れた新鮮な魚を使う即席料理です。魚を乳酸発酵させていないので米飯に酸味が移りません。そこで米飯に酢塩で味付けしたシャリの上に魚の切り身を載せ、醤油をつけて一口で食べられる形で提供されました。まさにファストフード提供スタイルです。
江戸前では魚を切ることが調理、その冴えが寿司の味を決めます。シャリは冷めずに生温か目がいいとも。冷蔵庫もない時代に屋台で食べた訳ですから、ワサビを挟んで魚の生臭さを抑え、醤油で毒消しが必須でした。今は冷蔵庫で魚介の鮮度を保てます。ワサビ醤油だけでなく、塩や柚子などで楽しむことも多くなりました。そんな江戸前寿司の味を引き立ててくれるマリアージュを紹介します。
白身魚、青魚の寿司と白ワインのマリアージュ
お寿司とワインのペアリングは難しいイメージがありますが、そうでもありません。合わせるポイントは酸のキレ。
寿司の楽しさは次から次へネタを変えて、いろいろな味を楽しめること。寿司を食べる際は、通常ネタとネタの間にガリ(甘酢ショウガ)を挟んで口の中に残る臭みをリセットして、次の魚介へスムーズに移れるようにします。ただガリは味が強いので、無理やりのリセットになってしまいます。
ところが、酸のエッジが立ったキレのいい白ワインを口に含むと、ガリを使わずに口の中をリセットできます。特にヒラメやタイなどの白身魚とイワシやサバなど背の青い魚を味わう際にはおすすめです。樽を使った白ワインは魚の臭みを増幅する恐れがあるので、避けた方が無難です。
トロやあなごの寿司と赤ワインのマリアージュ
マグロのトロ、そしてタレを塗った穴子や鰻を載せた寿司は、口の中に余韻を残して楽しみます。キレのいい白ワインはこの余韻を断ち切ってしまうため、存分に楽しめず、ちょっともったいない。
そこでここは赤ワインでペアリングしてみましょう。樽を使っていない、タンニンの少ない軽めの赤ワインがおすすめです。重い赤ワインの複雑さは魚介の風味とぶつかって、エグ味が出るリスクがあるので避けた方が無難です。
いろいろな寿司とロゼワインのマリアージュ
いろいろなネタを楽しむお寿司。白ワインや赤ワインでバッチリ決めるのは少し難しいという方には、辛口ロゼワインとのマリアージュをおすすめします。優しい酸味と果実味の辛口ロゼなら酢飯との相性もよく、どのネタにも寄り添ってくれます。特に野菜を多く使う手巻き寿司やちらし寿司とのペアリングは一押し。
極上寿司とシャンパンのマリアージュ
記念日に最高のお寿司。ネタの鮮度が抜群にいい時はシャンパンがおすすめです。特に白ブドウのシャルドネだけで造られるブラン ド ブランなら、繊細でエレガントな泡がお寿司の味の邪魔をしないだけでなく、ミネラルや旨味成分が多いので、魚介のそれと同調し、至福のマリアージュとなります。
いい寿司屋にワインを持ち込むのは勇気が要りますが、予約の際に「記念日だから特別なシャンパンで乾杯したい」というと「いいですよ」と持ち込みを快諾してくれるお店も結構あります。そんな時は板前さんにも一杯差し上げて、一緒に乾杯してもらってください。寿司屋のご馳走はカウンターでの板前さんとの会話ですから、存分に楽しんでください。またお店の日本酒(純米吟醸か純米大吟醸)も必ず注文してください。持ち込んだシャンパンと並べてペアリングしてみると、より一層楽しめますよ。
ぜひ、ご自宅でお寿司屋さんで、色々なマリアージュにトライしてください。