日本料理に例えるなら、まさに肉じゃがと言えるアルザスの郷土料理ベッコフ。牛肉と豚肉、たまねぎ、じゃがいも、にんじんを白ワインで鍋ごとオーブンで煮込んだ料理です。じんわり優しい味わいにはぜひ地元アルザスやドイツ。オーストリアのワインと共にどうぞ。
ベッコフとワインの基本ペアリング
ホロリと崩れるように柔らかく煮込まれた塊の牛肉と豚肉、その旨みが染み込んだじゃがいもと滋味あふれるスープ。ほかほかで、しみじみと素材の美味しさが味わえる料理です。白ワインで煮込むため、基本は同郷のワインということで、アルザスの白ワイン、近いところでドイツの白ワインなどが最高の組み合わせです。
優しい味わいとはいえ、牛肉と豚肉なので、タンニン分や果実味が強すぎない、エレガントで優しい赤ワインもおすすめです。
ベッコフとは|もっと詳しく
アルザスの郷土料理レストランなら必ずメニューにあるベッコフ(ベックホフと書かれることもあるし、ベッカーオッファっぽく聞こえることもあります)。
その昔、まだ薪のパン焼き窯だった時代、パンが焼き上がったあとの熱々の窯に、材料と白ワインを入れてふたをした鍋を入れ、緩やかに冷めていく薪窯の特徴を活かして、余熱で調理していたのがこの料理の発端です。農作業で忙しい人たちも、材料を切って鍋に入れておくだけで、昼にはほかほかの料理ができあがるので本当に重宝したはず。エネルギーも有効活用されて一石二鳥です。
現代ではそういう場面はなかなかないので、わざわざオーブンを温めて鍋ごと調理することになるのですが、ただ煮込むよりもぐっと深い味わいで、オーブンに入れればあとは放置でできあがってしまう手軽さも魅力です。
材料もシンプルで、牛スネ肉、豚ロース肉(好みでモモやバラでも)、たまねぎ、にんじん、じゃがいも、にんにく、白ワイン、ローリエ、クローブ、塩、コショウくらい。
かつてはパン生地の残りを使って、鍋と蓋の隙間を閉じていました。今は小麦粉を水で練ったものを使って代用します。これによって蒸気が外に漏れず完全な蒸し煮となって、美味しさが全て鍋の中に閉じ込められるのです。
白ワインとベッコフのマリアージュ
郷土料理にはその土地のワインを合わせるのが鉄壁。アルザスの骨太な白ワインならまず間違いありません。
お隣のドイツの白ワインもおすすめです。
赤ワインとベッコフのマリアージュ
お肉料理ながら、味わいがじんわりと優しい料理なので、赤ワインの場合はできるだけ優しいタイプがお勧めです。同郷のアルザスの赤ワインを筆頭に、お隣のドイツ、もう少し先のオーストリアの赤ワインはいかがでしょうか。
日本ではまだ耳慣れない料理ですが、オーブンとオーブンに入れられる蓋付きの耐熱容器があれば、実に簡単にできて、味わい深い料理です。まさに日本なら肉じゃがに匹敵するような庶民的な料理ですが、大量に作れて鍋ごと食卓に出せるので、パーティなどにもお勧めです。肉料理にもしっかり負けないアルザスの白ワインを用意して、冬の食卓を彩ってみてくださいね。