じっくり火を通すことで、驚くほど甘く、とろりとした食感になるネギ。表面についた香ばしい焼き目と内側のみずみずしい甘味は、シンプルながらワインにもよく合います。
日本では、焼いた長ねぎに甘辛い田楽味噌を添えた「焼きネギの味噌田楽」がおなじみです。一方、スペイン北東部のカタルーニャ地方には、カルソッツと呼ばれる細長いネギを豪快に焼き、ソースにつけて味わう冬の名物料理があります。
遠く離れた土地の料理でありながら、どちらも「ネギを焼いて甘味を引き出し、風味豊かなソースと味わう」という点がよく似ています。
この記事では、日本の焼きネギとカタルーニャのカルソッツについて、焼きネギの味噌田楽の簡単な作り方とともに、相性のよいワインをご紹介します。
焼きネギとワイン、基本の合わせ方
焼きネギにワインを合わせるときは、次の3つを意識すると選びやすくなります。
- 加熱によって引き出されたネギの甘味
- 表面の焼き目や炭火の香ばしさ
- 味噌やロメスコソースなど、合わせるソースのコク
ネギそのものは繊細ですが、焼くことで甘味と香ばしさが増すため、軽やかすぎるワインよりも、ほどよい果実味を持つものがよく合います。
味噌田楽には、果実味のある白ワインや、渋みの穏やかな軽めの赤ワインがおすすめです。味噌の甘辛さと旨味にワインの果実味が寄り添い、酸が後味を整えてくれます。
カルソッツのようにナッツや焼き野菜を使ったソースと合わせる場合は、若々しい白やロゼ、スパークリングワインも好相性です。どのタイプを選ぶ場合も、ネギの甘味を覆わない、香りや渋みの強すぎないワインを選びましょう。
日本の焼きネギとは
長ねぎは、生の状態では辛味や独特の香りがありますが、じっくり加熱すると辛味が和らぎ、やさしい甘味が引き出されます。表面を香ばしく焼き、中を蒸し焼きのように仕上げると、とろりとした食感も楽しめます。
日本では、塩や醤油を振って焼くほか、焼き鳥の「ねぎま」、鍋料理、すき焼きなどにも使われます。なかでも、甘辛い味噌を添えたり塗って焼いたりする味噌田楽は、ネギの甘味と味噌の旨味を一緒に味わえる、素朴で親しみやすい料理です。
味噌は発酵による深い旨味を持ち、焼くことで香ばしさも加わります。そのため焼きネギの味噌田楽は、和食でありながら、果実味や酸を持つワインと合わせやすい一品です。
カタルーニャの冬の風物詩「カルソッツ」
カルソッツ(calçots)は、スペイン北東部のカタルーニャ地方で栽培される、細長く育てたネギの一種です。土を寄せながら白い部分を長く育てることで、やわらかく、穏やかな甘味を持つネギになります。
カルソッツの発祥地として知られるのが、カタルーニャ南部の町バイス(Valls)。冬から春先にかけて旬を迎え、特に1月から3月ごろには「カルソターダ(calçotada)」と呼ばれる食事会が各地で開かれます。家族や友人が集まり、大量のカルソッツや肉料理、地元のワインを楽しむ、冬の風物詩です。
伝統的な調理法では、カルソッツをブドウの剪定枝などの強い直火で、外側が真っ黒になるまで豪快に焼きます。焼き上がったら紙などで包んで蒸らし、焦げた外皮を手でむいて、中のやわらかな部分を取り出します。
食べるときは、焼きトマト、にんにく、ナッツ、オリーブオイル、乾燥赤ピーマンなどで作る「サルビチャーダ」と呼ばれるソースをつけます。ロメスコソースに近いため、一般にはロメスコソースを添える料理として紹介されることもあります。
手でカルソッツを持ち上げ、ソースをたっぷりつけて口へ運ぶのが本場の食べ方。服を汚さないように前掛けをつけて楽しむ、にぎやかで開放的な料理です。
日本の焼きネギとカルソッツの共通点
日本の焼きネギとカルソッツは、使うネギやソース、焼き方こそ異なりますが、料理の考え方にはよく似たところがあります。
どちらもネギをしっかり焼き、生の状態にはない甘味とやわらかさを引き出します。表面の香ばしさと、中のみずみずしい食感の対比も魅力です。
さらに、日本では味噌、カタルーニャではトマトやナッツを使ったソースを合わせます。どちらのソースにも旨味とコクがあり、焼いただけのネギを食べ応えのある料理へと変えてくれます。
味噌田楽には日本酒という組み合わせも定番ですが、ワインを合わせると、ネギの甘味や焼き目の香ばしさが違った角度から引き立ちます。カルソッツを地元のワインと楽しむように、日本の焼きネギでも気軽にワインとのマリアージュを試してみましょう。
焼きネギの味噌田楽の簡単レシピ
長ねぎを食べやすい長さに切り、串に刺して香ばしく焼きます。田楽味噌は写真のように添えるほか、仕上げに塗って軽く焼いてもおいしく仕上がります。
材料(2人分)
- 長ねぎ:2本
- サラダ油または米油:小さじ1
- 竹串:4本程度
田楽味噌
- 味噌:大さじ2
- みりん:大さじ1
- 酒:大さじ1
- 砂糖:大さじ1
※味噌の塩味や甘さに合わせて、砂糖の量は調整してください。
作り方
- 長ねぎは洗って水気を拭き、3~4cmほどの長さに切ります。
- 長ねぎを数本ずつ竹串に刺します。竹串はあらかじめ水につけておくと、焼いたときに焦げにくくなります。
- 小鍋に田楽味噌の材料をすべて入れ、弱火にかけます。焦がさないように混ぜながら加熱し、つやが出て少しとろみがついたら火を止めます。
- フライパンまたは焼き網に薄く油をなじませ、長ねぎを並べます。弱めの中火で転がしながら焼き、中までやわらかくなるように火を通します。
- 表面にこんがりと焼き目がついたら器に盛り、田楽味噌を添えます。
お好みで、焼き上がる直前に田楽味噌を薄く塗り、味噌の表面を軽くあぶってもよいでしょう。味噌は焦げやすいため、塗った後は短時間で仕上げます。
※太い長ねぎを使う場合は、焼き目をつけた後にふたをし、弱火で数分蒸し焼きにすると中までやわらかくなります。
果実味のある白ワインとのマリアージュ
焼きネギにまずおすすめしたいのが、やわらかな果実味ときれいな酸を持つ白ワインです。
ネギは加熱すると甘味が増すため、鋭くドライなだけのワインよりも、熟したりんごや洋梨、桃などを思わせる果実味のあるタイプがよく合います。ワインの果実味がネギと田楽味噌の甘味に寄り添い、酸が味噌のコクを軽やかに整えてくれます。
リースリングやピノグリなどの、香りと果実味を持ちながら酸も保たれた白ワインが候補です。味噌を甘めに仕上げる場合は、ごくわずかに甘味を感じるタイプも合わせやすいでしょう。
カルソッツに合わせる場合は、樽香の強すぎない若々しい辛口白がおすすめ。ネギの甘味やロメスコ系ソースの野菜、ナッツの風味を邪魔せず、食卓全体を爽やかにまとめてくれます。
辛口ロゼワインとのマリアージュ
焼きネギの味噌田楽にもカルソッツにも幅広く合わせやすいのが、果実味のある辛口ロゼワインです。
白ワインのような爽やかさと、赤ワインに通じる赤い果実の風味を併せ持つため、ネギの繊細な甘味を覆わず、味噌や焼き野菜を使ったソースのコクにも寄り添います。
カルソッツには若い白ワインやロゼワインが、ネギの甘味と力強いソースに爽やかさを加えます。
軽めの赤ワインとのマリアージュ
甘辛い田楽味噌をたっぷり添えるなら、渋みが穏やかな軽めの赤ワインもよく合います。
味噌の発酵由来の旨味と、焼き目の香ばしさには、チェリーやベリーを思わせる明るい果実味が好相性。タンニンが強すぎず、酸のある赤ワインがおすすめです。
少し冷やして軽やかに楽しむと、ネギの繊細な風味を覆いにくくなります。反対に、渋みや樽香の強い赤ワインは、ネギの甘味やみずみずしさを感じにくくするため、避けたほうがよいでしょう。
焼き網や炭火でしっかり焦げ目をつけた場合や、味噌に少量のごま、くるみ、山椒などを加えた場合にも向いています。
スパークリングワインとのマリアージュ
焼きネギを前菜やおつまみとして楽しむなら、辛口スパークリングワインもおすすめです。
泡と酸が味噌のコクをすっきりと流し、ネギの甘味や焼き目の香ばしさを引き立てます。田楽味噌を控えめに添えた軽い仕立てには、フレッシュで果実味のきれいなタイプがよく合います。
カルソッツなら、カタルーニャを代表するスパークリングワインも土地の組み合わせとして楽しめます。ロメスコ系ソースのナッツやオリーブオイルのコクを泡が軽やかに整え、長い食事の始まりにもぴったりです。
じっくり焼いたネギの甘みと旨味のあるソースを楽しむ
日本の焼きネギと、カタルーニャのカルソッツ。どちらも、ネギをじっくり焼くことで甘味とやわらかさを引き出し、旨味のあるソースと一緒に楽しむ料理です。
日本では甘辛い田楽味噌、カタルーニャではトマトやナッツを使ったサルビチャーダやロメスコソース。味わいは異なりますが、ネギの甘味、焼き目の香ばしさ、ソースのコクが重なる点はよく似ています。
ワインは、果実味のある白を基本に、辛口ロゼやスパークリングも好相性。味噌の風味をしっかり利かせる場合は、渋みの穏やかな軽めの赤ワインもおすすめです。
身近な長ねぎを香ばしく焼き、田楽味噌とワインを添えて、日本とカタルーニャに通じる素朴なマリアージュを楽しんでみてください。






















